顧客の獲得に欠かせないのが営業活動ですが、営業と聞くと、テレアポからの訪問を繰り返すスタイルを思い浮かべる方もいるかもしれません。
営業には様々な種類があり、自社で扱う商品やサービスの特性によって最適なスタイルを選ぶ必要がありますが、その営業スタイルの1つに「反響営業」があります。
本記事では、「反響営業」の概要からメリット・デメリット、向いている人、必要なスキルなどをわかりやすく解説します。
さらに、世間で「きつい」と言われる理由も紹介しますので、是非最後までご覧ください。
反響営業とは?
反響営業は、「プル型のインバウンド営業」です。
具体的には、テレビや新聞などのメディア、Web広告やDMなどによる広告宣伝を行い、その反応に対して営業をかける営業手法です。
ひたすらテレアポを行って時間の限り商談を詰め込む、一般的なプッシュ型の営業のスタイルとは異なり、見込み客を明確にしてからアプローチをします。
反響営業では、まずターゲットを設定した上で、広告宣伝に使用するメディアやツール、訴求する内容を決定します。その上で広告宣伝を行い、問い合わせなどの反応があった見込み客に営業をかけるのです。
そのため、反響営業は「相手の興味の度合い」が分からない状態での、テレアポや飛び込み営業による新規開拓よりも効率が良い点が特徴です。
インバウンド営業とアウトバンド営業の違い
反響営業をインバウンド営業と考えると、反響営業と反対の手法はアウトバンド営業と言えるでしょう。
インバウンド営業とは「情報発信による顧客からの問い合わせに対応する手法」です。
一方で、アウトバンド営業とは「自社から積極的にアプローチする手法」で、テレアポや飛び込み営業が代表格です。
両者の主な違いを整理すると、以下の通りです。
インバウンド営業 | アウトバンド営業 | |
---|---|---|
顧客の温度感 | 興味ある | 不明 |
成約率 | 高 | 低 |
連絡先 | あり | なし |
広告宣伝 | 必要 | 不要 |
予算 | 大 | 小 |
営業リソース | 少 | 多 |
★下記の記事でインバウンド営業についての最新トレンドを解説しています。
不動産の反響営業
不動産業界などの高額な商材を扱う業界では、特に反響営業が行われるケースが多く見られます。
不動産業界の反響営業では、折り込みチラシやダイレクトメールによる営業のほか、ホームページの問い合わせフォームなどから営業することになります。
自社が提供するサービス・物件などに関心を持つお客さんを相手にするため、比較的成約につながりやすく、成果が出やすい手法と言えます。
反響営業のメリット・デメリット
反響営業には、以下のメリットとデメリットがあります。それぞれ確認してみましょう。
メリット① 成果に繋がりやすい
反響営業のメリットの一つ目は、成約率の高さにあります。
飛び込み営業の場合、訪問先が見込み客である可能性は低いため、労力の割に思ったような成果が得られないことが多々あります。
一方、反響営業であれば、見込み客に効率よくアプローチできるため、少ない営業件数で高い成約数、成約率を維持することが期待できます。
メリット② 営業リソースの効率化
反響営業の二つ目のメリットは、営業マンのリソースを効率化できる点にあります。
営業先のアポ取りから行う飛び込み営業とは異なり、営業先は会社や商品・サービスに興味があり、すでに反応を示している顧客です。
そのため、簡単な説明で商品やサービスを理解してくれるので、少ない営業リソースでナーチャリングが可能というメリットがあります。
★リードナーチャリングの詳細については、こちらの記事をご覧ください。
デメリット① 反響が無いと営業活動ができない
反響営業のデメリットとしては、反響が無ければ営業活動すらできない点が挙げられます。
インバウンド営業はアウトバンド営業とは反対に、量より質の営業活動と言えます。
プル型であるが故に、情報発信のフェーズで失敗をすると、アプローチもできないと言う機会損失の危険性があることは把握しておきましょう。
反響営業の仕事内容
反響営業の仕事内容は、大別すると以下の2つです。
- 見込み顧客への情報発信
- 問い合わせへの対応
ポイントは、この2つのステップで顧客に訴求する内容に一貫性を持たせることです。
一貫性がない訴求は、見込み客の心理に不信感を生むため、成約の大きな妨げになります。
逆に、このポイントを押さえれば成約までの流れをスムーズにできるでしょう。
見込み顧客への情報発信
反響営業ではまず、マーケティング戦略を練るところからスタートします。
より多くの見込み顧客を獲得するために、自社商材の「顧客目線での価値」を分析調査し、その価値を必要とする顧客層をターゲットに設定します。
そのうえで、出稿するメディアの媒体や訴求内容の選定、予算管理やパフォーマンス分析なども担当する可能性があります。
反響営業は他の営業手法よりも、広告宣伝による情報発信に多額の費用を使うため、重要度がとても高くなります。
この費用を無駄にしないためにも、「確実に反響を得られる」という確信を持てるまで、しっかりとPDCAを回すことが大切です。
★顕在層をピンポイントで狙えるリスティング広告やフォーム営業は、反響営業でよく使われる手法です。
問い合わせへの対応
見込み顧客への情報発信をしたら、自社の広告に興味を持った見込み客から問い合わせがあるでしょう。
インバウンド型の反響営業では、ここが実質的な営業活動に当たります。
多額の広告費をかけて得た貴重なリードをいかに取りこぼさないかが、腕の見せ所になります。
事前に発信した情報から更に掘り下げ、それぞれの顧客に提供できる「個別の価値」を訴求し、商談に繋げることが求められます。
反響営業がきつくなる理由
ここまで仕事内容などを解説しましたが、反響営業は「きつい、難しい」と言われることがあります。
そのように言われる理由を2つ挙げ、それぞれ解説していきます。
- 顕在顧客の取りこぼしによる精神的ダメージ
- 反響が悪いと抜本的な見直しが必要
きつい理由① 顕在顧客の取りこぼしによる精神的ダメージ
反響営業はその名の通り、反響のあった顕在的な顧客に対して営業をかけます。
そのため、営業により成約にいたる確度は高いと言えます。
一方で、顕在客を取り逃してしまったときは、精神的にきつい、辛いと感じてしまうかもしれません。
反響営業は比較的、成約して「当たり前」の雰囲気があるため、失注のダメージは通常の営業よりも大きいでしょう。
きつい理由② 反響が悪いと抜本的な見直しが必要
反響営業では、反響が無ければ、当然アプローチすることも出来ないという欠点があります。
反響営業は相手からの反響により営業を進めることになるため、根本の反響を得るための工夫も考えなければいけません。
その場合は、広告の内容やPRの仕方を見直すなど、大きなマーケティング戦略の転換を求められるでしょう。何かを企画することや、戦略を考案することが好きな人でないと、楽しめないかもしれません。
他の営業と異なり、抜本的に計画の見直しを迫られることが多いので、世間で「きつい」と言われているようです。
反響営業に向いている人
反響営業では、以下のような人が成果を出しやすい傾向にあります。
それぞれのタイプ別に見ていきましょう。
戦略的に考えることが得意な人
反響営業では人海戦術的なプッシュ型の営業は行わず、広告宣伝というアクションが見込み客へのアプローチの起点となります。
戦略という字は、「戦いを略す」と書きますが、プッシュ型の営業のように多くの戦いに臨むのではなく、反響営業では余計な戦いをせず、どれだけ効率的に多くの反響を得られるかがポイントとなるといえるでしょう。
頭を使って戦略的に営業をしたいという人は、最小限のアクションで最大限の成果を引き出す可能性を秘めているため、反響営業に向いているといえます。
情報収集や分析が得意な人
反響営業での戦略づくりに必要なのは、市場環境と自社の商品・サービスの正確な現状認識です。
ここが企画の起点となることから、反響営業には情報収集能力の高さ、その情報を分析して顧客ニーズを把握する力が欠かせません。
ちなみに、情報収集はネット経由でもある程度はできますが、加工されていない一次情報から得られる気付きは多いでしょう。
したがって、ターゲットとなる顧客の近くに足を運び、直接情報を聞き出すくらいの「愚直さ」も必要な素養となるでしょう。
反響営業に必要なスキル
反響営業で成果を出すために必要なスキルは、以下の3つが挙げられます。
- 顧客ニーズを的確に捉える企画力
- ヒアリング能力
- 提案力
それぞれのポイントについて、簡単に見ていきましょう。
顧客ニーズを的確に捉える企画力
反響営業でまず大切になるのが企画力です。
前述の通り、自社商材が提供できる「価値」をもとに、顧客ニーズを探って仮説を立て、効果的な広告戦略を考えます。
この一連の流れが反響営業の屋台骨となります。
反響営業の成約件数の計算式は、「問い合わせ数×成約率」と非常にシンプルです。
企画力が高ければ、広告で見込み客から数多くの問い合わせを獲得でき、必然的に成約件数を量産できるようになります。
ヒアリング能力
広告宣伝による反響で問い合わせを得られたとしても、成約に直結するケースは多くありません。
広告は紙面のスペースが限られており、十分な情報量を提供できないことが少なくないため、見込み顧客には「聞きたいこと」が残っている状態にあります。
この聞きたいことにしっかりと耳を傾け、見込み顧客の求める情報を提供しましょう。
さらに、顧客自身すら気付いていないような、検討に必要な情報のモレに気付き、情報を提供できることが理想です。
例えば、ドリルを販売している場合、見込み客の「ドリルが欲しい」ということばを鵜呑みにするのではなく、ヒアリングを進める中で、本当に見込み客が欲しいのはドリルではなく「穴の開いた板」だと気付かせる、といったイメージです。
このような対応をするためには、高いヒアリング能力が必須です。
提案力
反響営業ではヒアリングした内容を踏まえ、見込み顧客に寄り添った「提案」をすることが大切です。
これができれば成約率はグッと高くなります。
例えば、容量300gの商品を購入しようと考えている見込み客に対して、家族構成や使用頻度をヒアリングし、使用量をシミュレーションした結果、より割安な容量500gの同商品の方がおすすめだと提案するようなイメージです。
見込み客がその提案を納得して受け入れれば、成約率アップにつながるでしょう。
反響営業のコツ
反響営業を成功させるために、必ず押さえておきたいコツは、以下の2点です。
それぞれのポイントについて見ていきましょう。
お客様の心の動きを想像する
広告宣伝の企画戦略の際に重要なのが、自社の広告が目に留まった時に、見込み顧客が何を考えるかを想像することです。
「どんな情報に注目するか?」
「その情報にどう反応するか?」
「次にどのような行動を取るか?」
など、自分が消費者の立場ならどうするかの視点でイメージします。
企画者1人の考えでは想像力にも限界があるため、複数人で考えることで、思考の漏れを防ぐことがおすすめです。
徹底してお客様の心に寄り添う
ヒアリングは問い合わせを受けてから始まりますが、実際の勝負はヒアリングの前から始まっています。
「どのような見込み客から問い合わせがあるか?」
「どんなことを聞かれるか?」
「どんな場合にどんな提案をするか?」
これらを事前に整理して担当者自身が反芻しておくことが大切です。
しかし、ヒアリング時はマニュアル一辺倒の対応でなく、あくまでもお客様の心に寄り添った対応をしましょう。
お客様の声に共感を示し、
お客様の状況や要望を担当者の言葉で再整理した上で、
お客様に最適な提案をする
このお客様ファーストの精神が、反響営業で最も重要なコツです。
反響営業が多いのはどの業界?
反響営業は、広告宣伝に多額の費用を要する営業手法のため、単価や利益率が低いと費用を回収して利益を出すことが難しいものです。
したがって、単価や利益率の高い商材を扱う業界で多用されます。
反響営業が使われる業界の代表例としては、住宅販売・リフォーム、自動車販売・買取りなどが挙げられます。
新聞折り込みで目にすることが多く、単価・利益率が高そうな業界といえるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
反響営業は、まずは効果的に広告宣伝を行い、その問い合わせ対応を通じて成約を目指すプル型の営業です。成約率アップのポイントは、見込み客の置かれた状況や心の動きなどを正確に捉え、広告内容や問い合わせ対応に反映させること。
「お客様とWinWinの関係を築くこと」を軸に据えた反響営業で、企業の成長・発展を実現してください。
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