企業が経営目標の進捗をチェックし、方向性を整えるために必要な予実管理。
大半の企業で、予実管理は実施済みかと思いますが、すべてが効果的に進められているとは限りません。
そこで今回は予実管理の手順やコツ、予実管理表やエクセルグラフの作成方法、無料テンプレート・ソフトなどをわかりやすく解説します。
予実管理をしっかりと見直し、経営管理に活かしたいと考えている人は、是非参考にしてください。
予実管理とは?
予実管理とは、企業の「予算」と「実績」の差異を比較分析して、現在の経営状況を把握する手法のことです。
予実管理をすることで、経営目標に向けて予算を設定し、どの程度順調に進んでいるのか定量的に進捗を確認しながら、次の戦略を練ることができます。
仮に予実管理ができていないと、どのように目標達成したのか、またはできなかったのか要因分析ができず、今後の改善策の検討を行うことも不可能です。
近年はIT技術の普及で、予実管理をサポートするツールが多く登場しています。
本記事の最後に、おすすめツール・ソフトをご紹介しますので、最後までご覧ください。
予実管理と予算管理の違い
予実管理と混同されやすい言葉として、予算管理が挙げられるでしょう。
両者は経営管理において頻繫に使われる言葉ですが、その目的が異なります。
予算管理は、経営目標や過去の実績、市場動向などを踏まえて、予算を数値で定量的に表現し、経営効率を管理する手法です。
目的は、予算を調整し、経営資源を上手く活用することで、経営の効率を最適化することです。
一方で、予実管理の目的は、「予算」と「実績」の差異を定量化し、それに応じた対策の意思決定をサポートすることです。
つまり、予実管理は、予算管理のプロセスのなかの一部の業務と言えるでしょう。
予実管理の手順・プロセス
予実管理を正しく行うには、以下の4つの手順を試してみてください。
【手順①】予算目標を立てる
予実管理では、予算目標を実績に近づけることを目指すため、まずは予算目標を立てる必要があります。
具体的には売上、売上原価、販管費、営業外損益などの項目を設定しましょう。
既に事業を行っている場合は、基本的に過去の実績を参考に今後の予定を織り込むと、大きな齟齬が生じにくくなります。
ただし、市場環境などの外部要因などを分析し、しっかりと数値に反映させることが大切です。
予算目標を立てる際のポイントは、現実的に達成可能かつ、実力よりも少し高めの水準を目安にすることで、適度なモチベーションを維持しながら進めることが出来ます。
【手順②】月次決算をする
予算目標を立てたら、予実管理は月ごとに行い、可能な限りリアルタイムで実績をチェックします。
ビジネスでは、繁忙期や閑散期によって予実は毎月のように変動します。
予算と実績に差異が生じたら、その問題が悪化する前に軌道修正しなければなりません。
予実管理を一目で行うには、エクセルやスプレッドシートなどのツールを利用することがおすすめです。後に方法については、詳しく解説します。
月次決算の結果は可能な限り社内に共有することで、予算目標に対する経過や進捗、それに応じた努力目標を把握させることが大切です。
【手順③】予算と実績を比較して対策を練る
現状と目標のギャップをすり合わせることで、直近で解決すべき課題や、進むべき方向性が明確になってきます。
先程の売上、売上原価、販管費、営業外損益などの各項目において、予算と実績を比較し、乖離があれば要因を分析します。
その中でも特に重要とされるのが、「営業利益」です。
営業利益とは、売上総利益(売上高ー売上原価)から販管費(販売費および一般管理費)を差し引いたものです。
この数値が、売上と経費のバランスを示す指標であり、経営状況が黒字か赤字かを判断する重要な項目です。
そのため、予実管理ではこの営業利益を中心に置いて、マネジメントを進めるのが肝心です。
予実管理の成功の秘訣とは?
予実管理を成功させる秘訣は、全部で4点です。
それぞれを詳しく解説しますので、ぜひ取り入れてみてください。
目標は高すぎても低すぎてもNG
最初に目標設定をする際に気を付けたいのが、高すぎる数値や低すぎる数値を設定しないことです。
どちらのケースであっても、従業員のモチベ―ション維持が難しくなるからです。
目標と社員の向上意欲は、強く相関しています。
昨年度の数字をもとにして、プラス5~10%程度の目標を設定すると丁度いいと言われています。
また、業界の平均値や競合他社の履歴を参考にしてみても良いでしょう。
予算の目標は、社員にとって容易には達成できないが、努力すれば手が届く水準に設定することがベストです。
PDCAサイクルを活用する
次に、予実管理を実施して課題を早期解決するためには、PDCAサイクルが非常に有効です。
PDCAとは「Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(行動)」の4つを指します。
実際に、予実管理のプロセスに当てはめると、以下のような流れです。
- 【Plan】予算目標を設定し、アクションプランを決める
- 【Do】計画に基づいて日々の業務をこなす
- 【Check】月次決算で進捗を確認し、計画と結果の差異を明確にする
- 【Action】乖離があれば原因を特定し、必要な対策を検討する(→【Plan】に反映)
「Action」を決めて「Plan」に反映させる段階では、社内の関係部署と調整・合意を図ることが大切です。
これらのサイクルを継続的に続ければノウハウが溜まり、目標設定を失敗せずに予算通りに進めやすくなります。
営業利益を重視する
前述しましたが、予実管理で最も重要な指標が「営業利益」です。
営業利益とは、売上総利益(売上高ー売上原価)から販管費(販売費および一般管理費)を差し引いたものです。
どんなに売上が高くても、経費がかかり過ぎていれば利益は僅かになってしまいます。逆に、売上が少なくても経営効率が良ければ利益は大きくなります。
この他にも売上、販管費など注目すべき項目はありますが、あくまでも優先度を設けて、全ての数字を気にしすぎないようにしましょう。
予算に執着しすぎない
予算目標が高すぎて、残りの期間で達成できないと分かると、無理矢理にでも到達させようとしてしまいます。
そのとき、売上の水増しや経費の改ざんといった不正行為が発生するリスクが高まります。
しかし、上場企業であれば投資家への説明の手間を考えて、予算と実績が合わないことを嫌う傾向があります。中小企業であれば、外部からの評価を気にして予算に執着する必要は全くありません。
繰り返しになりますが、予算の構成要素にも重要度の優先順位があります。
重視すべき指標とすべきでない指標を見極め、もしも数字が乖離してしまった場合は、状況を見直してすぐに修正しましょう。
予実管理表を作成しよう【グラフ・無料テンプレ活用】
予実管理表はExcelやスプレッドシート、もしくは専用のツール・ソフトを使うのがおすすめです。
Excelは機能性が高く複雑な計算が可能ですが、リアルタイムで共同編集ができません。
正確に予実管理をするなら表を作成して、関係者同士で共有できるようにしましょう。
今回のトピックは以下の4つです。
- 予実管理表に必要な項目
- 視認性を高めるExcelグラフ活用
- 無料テンプレート3選
- 予実管理表を作成するコツ
各トピック、それぞれ詳しく確認していきます。
予実管理表に必要な項目
前提として、必要な項目は事業内容によって多岐にわたりますが、管理項目としては一般的に下記の通りです。
では、これらの項目を数値データとして落とし込んでみても、いまいち理解しにくいのではないでしょうか。
そこで次項では、予実管理で欠かせない、数値データをグラフに変換する方法を解説します。
視認性を高めるExcelグラフ活用
Excelで予実管理を行い数値を扱う場合、より視認性を高めるためにグラフを活用するケースが多くあります。
以下の簡単な予実管理表のサンプルをもとに、おすすめのグラフを2種類ご紹介します。
【サンプル】
予算と実績を比較しやすい2重棒グラフ
1つ目は、比較がしやすい2重棒グラフです。
予算と実績の棒グラフをそれぞれ並列に並べると、一目でバランスを把握することが出来ます。
さらに、2つの棒グラフを少し重ねることで、より見やすいグラフにすることが可能です。
作成方法としては、「挿入」タブの「グラフ」から「集合縦棒」を選択します。
次に、グラフ部分をクリックして「データ系列の書式設定」を表示させ、系列のオプションで軸の位置を調整すると、上記のように少し重なった2重棒グラフを作成できます。
増減幅が瞬時にわかるウォーターフォールグラフ
2つ目は、予算と実績の増減幅がわかるウォーターフォールグラフです。
日本語にして「滝グラフ」とも呼ばれます。
横軸は期間だけではなく、商品名や、予実の細かい構成要素に比較対象を変えることも可能です。
増減の要因を簡潔に定量的に表現したいときに、便利なグラフです。
作成方法としては、「挿入」タブの「グラフ」から「ウォーターフォール」を選択するだけです。
予実管理のグラフにおいては、この2種類が活用できれば十分でしょう。
このようにして、誰が見てもすぐに理解できるようなデータ管理を目指しましょう。
無料テンプレート3選
前項で必要な項目をご紹介しましたが、Excelやスプレッドシートを活用する場合、テンプレートを使うと効率的に作成できます。
ここでは便利な無料テンプレートを3つ、厳選してご紹介します。
それぞれ項目が異なりますので、自社に合ったテンプレートを選びましょう。
bizocean
▼ダウンロードはこちらから
URL:予実管理表|bizocean(ビズオーシャン)
みんエク
▼ダウンロードはこちらから
URL:予算管理表01.xlsx | 無料で使える みんエク! みんなのExcelテンプレート (all-excel.net)
Excelフリーソフト館
▼ダウンロードはこちらから
URL:予実管理表テンプレート・フォーマット・雛形 (dti.ne.jp)
予実管理表を作成するコツ
最後に、予実管理表を作成する上での4点のコツを確認しておきましょう。
- データを詰め込んで複雑にし過ぎない
- 部門単位、商品単位で1つのシートを作成する
- 横軸の比較項目は、1画面に抑えて視認性を高める
- 予実管理の専用ツールの導入も検討する
Excelやスプレッドシートは多くの企業で使い慣れたツールですが、データ量や編集の機能性などの点でやはり限界があります。
自社の目的や状況に応じて、最適な管理方法を選択するようにしましょう。
【初心者向け】予実管理ツール2選
手軽に使えるツールがいいのなら、エクセルかスプレッドシートのどちらかを使うといいでしょう。
Excel
手軽に予実管理をするなら、お馴染みのマイクロソフトのExcelがおすすめです。
簡単に表を作れて誰でも使いやすいので、予実管理表を編集するハードルが低くなります。
ただ、共有フォルダにエクセルを保管した状態では同時編集ができず、フォルダが紛失する可能性があります。
複数人で編集する場合は、後述するスプレッドシートを利用しましょう。
スプレッドシート
スプレッドシートはGoogleが提供しているクラウド型のツールです。
見た目はエクセルと似ていますが、クラウド型なのでブラウザやアプリからひらくことになり、同時編集や自動保存が可能となっています。
社内のメールシステムがGoogleの場合は、スプレッドシートを使うとアカウント情報が紐づけられ便利です。
予実管理の専用ソフト4選
専用のソフトやアプリを使う際は、以下の4つがおすすめです。
それぞれの特徴を紹介しますので、予算や機能に応じて検討してみてください。
BizForecast
BizForecast(ビズフォーキャスト)は、エクセルのデメリットとなりうる属人性や機能面の不十分さをカバーするために作られたソフトです。
ソフトならではのセキュリティ対策と分析機能を活かし、予実管理の数字をもとに経営状態の分析や報告といった機能が豊富に搭載されています。
予実管理だけでなくプロジェクト管理や人事評価システムなど、他部門で活用できるシステムもあるため、部門をまたいでまとめて導入してもいいでしょう。
Oracle Planning and Budgeting Cloud Service
Oracle Planning and Budgeting Cloud Service(オラクル・プランニング・アンド・バジェッティング・クラウドサービス)は、オラクルグループが提供する予実管理ツールです。
世界の10,000社以上の企業に導入され、予実管理ツールとして国内外から注目をあつめています。
予実管理を数字で見るだけでなくダッシュボード化したり、PLやBSの予測をシュミレーションしたりできる、ソフトならではの機能に定評があります。
Sactona
Sactona(サクトナ)は予実管理や予算編成など、経営管理に特化したシステムです。
富士フイルムやパナソニック、LIXILなど大手企業にも多数導入された実績を持っています。
予実管理は部門別、製品別、支店別などのカスタマイズが可能で、大きな規模で予算管理をまとめて行いたいときにおすすめのシステムといえるでしょう。
STRAVIS
STRAVISは950社に利用されている、グループ経営の連結会計に特化したシステムです。
連結会計や管理会計など、グループ全体で予実管理を行い、データ収集や分析を行うのに適しています。
またカスタマーサポートでは法制度に関する質問も受け付けており、ほとんどは30分以内に回答してもらえるためスピーディ-にやり取りが進むこともメリットのひとつです。
まとめ
今回は予実管理の手順やポイント、おすすめのツールなどを解説しました。
予実管理をうまく行うと、従業員のモチベーションを保ったまま売上を達成しやすくなり、事業を育てていきやすくなります。
成功のコツは、下記の通りでした。
- 目標は高すぎても低すぎてもNG
- PDCAサイクルを活用する
- 営業利益を重視する
- 予算に執着しすぎない
本記事で紹介したポイントやツールを活用し、ぜひ自社の経営に活かしてみてください。
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