「LTVやCACは具体的にどういう意味?」
「実際にどう使えば経営に活かせるの?」
企業経営において欠かせない指標が、LTVとCACです。
耳にしたことはあるが、何を表しているのか、実際にどう活用すればいいのか分からないという方も少なくないでしょう。
そこで本記事では、LTVとCACの意味と違い、計算方法、ユニットエコノミクスの適正目安と改善施策について分かりやすく解説します。
LTVとは?

Life Time Value(ライフ タイム バリュー)とは、「顧客の生涯価値」を表す言葉であり、頭文字をとってLTVと略されます。
このLTVにはいくつかの考え方がありますが、一般的に「顧客1人が生涯を通じて企業にもたらす売上から、各種費用を差し引いた後に残る利益総額」を表します。
近年は、サブスクサービスのビジネスモデルが台頭し、継続的に1人の顧客から売上を得られる収益構造が注目を集めています。
ビジネスを短期的な視点ではなく、長期的な視点で考えるうえでとても重要な指標です。
LTVの算出方法
LTVの算出方法は、業種や業態、考え方によって異なりますが、大きく3つあります。
- 売上ベースのLTV
- 利益ベースのLTV
- 概算利益ベースのLTV
利益をベースに考える方が正確ではありますが、簡易的に売上ベースで考える場合もあります。
それぞれ確認しておきましょう。
①売上ベースのLTV
LTV = 平均購買単価 × 購買頻度 × 継続期間
この売上ベースの考え方が、最もシンプルで簡易的な算出方法です。
例えば、Aさんはデパートで1回2万円の買い物を年に5回、これを10年間続けたとします。
この場合、LTVは次のとおりです。
LTV
= 20,000円 × 5回 × 10年間
= 1,000,000円
②利益ベースのLTV
LTV = (平均購買単価×購買頻度×継続期間) - 新規顧客獲得・維持コスト
例えば、先ほどのAさんを顧客転換するための宣伝費が5万円、Aさんを継続させるためのDMなどのコストが年間1万円だったとします。
この場合、LTVは次のとおりです。
LTV
= (20,000円×5回×10年間) - (50,000円+10,000円)
= 940,000円
③概算利益ベースのLTV
LTV =(売上高-売上原価)÷ 顧客数
事業全体の売上高1千万円で売上原価が500万円、顧客数が10人だったとします。
この場合のLTVは次のとおりです。
LTV
= (10,000,000円-5,000,000円) ÷ 10人
= 500,000円
このように、一口にLTVといっても、指標の算出方法は何に主眼を置くかで変わります。
LTVについて検討する際は、何をベースに考えるのかを最初に明確にするといいでしょう。
CACとは?

Customer Acquisition Cost(カスタマー アクイジション コスト)とは、「顧客獲得コスト」を意味する言葉であり、頭文字をとってCACと略されます。
これは、「新規顧客を1人獲得するために、どれだけの営業費用やマーケティング費用などをトータルで要するか」を示す指標ですが、このCACは単独で良し悪しを評価できる指標ではありません。
先述したLTVとのバランスを考慮することで、初めてその良し悪しを判断することができます。
※後に詳しく触れます
このCACは、以下の3つに分類することができます。
▶ Paid CAC (有料施策による顧客獲得コスト)
▶ Organic CAC (自然流入による顧客獲得コスト)
▶ Blended CAC (上記2つを合算した顧客獲得コスト)
新規顧客を獲得するために、企業は様々なコストをかけています。
それは、顕在的なものから、潜在的なものまで多種多様です。
それぞれの分類に、該当する費用を見てみましょう。
CACの種類 | 該当する費用例 |
Paid CAC | 広告出稿・運用費用 リアル・Webでの販売促進費用 営業担当者の人件費 |
Organic CAC | SEO対策ソフトの料金 サイト運用者の人件費 |
Blended CAC | 上記2つすべて |
CACの算出方法
CACは、下記の計算式で算出することができます。
CAC = 顧客獲得コスト ÷ 獲得できた顧客数
例えば、新規顧客5人を獲得するために、100万円のコストがかかっていれば、CACは20万円となります。
CACを管理する目的は、その事業が「利益の出るビジネスモデル」になっているか否かを把握するためです。
「顧客獲得にどれだけのコストを要しているのか」「実現した顧客獲得数と比較して効率の悪いマーケティングになっていないか」などの定点観測が大切です。
顧客獲得までの「期間」にも注目しよう
コストだけでなく、顧客獲得までの「期間」もCACに関連して重要です。
中小企業の重要な経営課題の1つとして、「資金繰り」が挙げられます。
この「資金繰り」という視点でビジネスを考えると、最初に顧客獲得コストの支出があり、その後に顧客獲得による収入が入ります。
この支出から収入までの期間が長ければ長いほど、たくさん必要になるのが「運転資金」です。
収益化までの期間が長いと、多くの運転資金が必要になり、資金繰りが悪化してしまうこともあります。
資金が潤沢でない場合、この視点でのCAC管理も不可欠です。
CAC Payback Period で費用対効果がわかる
CAC Payback Periodとは、顧客獲得コストを回収してから利益を生み出すまでの期間のことです。
計算方法は下記の通りです。
CAC Payback Period =CAC ÷ 顧客の平均単価
適性の目安としては6ヶ月~12か月で、この期間が短ければ短いほど費用対効果が高い収益構造だと分かります。
顧客獲得から、6~12カ月以内にコスト回収できるビジネスモデルを目指すと良いでしょう。
経営の健全性をチェックするために、ユニットエコノミクスと同様に算出してみましょう。
ユニットエコノミクスを算出しよう

LTVとCACの意味と算出方法を紹介しましたが、ビジネスモデルの良し悪しの判断材料として、ユニットエコノミクスというものがあります。
ユニットエコノミクス = LTV ÷ CAC
LTV(顧客生涯価値)をCAC(顧客獲得コスト)で割ることで、事業の健全性を確かめることができます。
理想の目安は3以上
ユニットエコノミクスの算出ができたら、自社事業の健全性をチェックしましょう。
この数値が1を上回っていれば黒字、1を下回っていれば赤字だと判断できます。
理想的なユニットエコノミクスの目安は、「3以上」と言われています。
つまり、ビジネスを成長・存続させるために重要なのは、LTVがCACの3倍以上であると言うことです。
また、ここでは先述の「運転資金」を考慮することも必要です。
ユニットエコノミクスが1を上回っていれば、会社に利益は残る計算になりますが、この数値が1に近ければ近いほど、収益性が低く、回収期間を考えると資金繰りに問題が生じます。
また、金融機関からの借入を運転資金に回している場合の支払い利息も考慮すると、経常収支はシビアな数字になってしまいます。
では、ユニットエコノミクスの数値を高めるためにはどうすれば良いのでしょうか?
そのポイントは、「LTVを高め、CACを抑える」ことです。
それぞれに対しての有効な施策を、次項で解説していきます。
2つのユニットエコノミクス改善施策
ここでは経営の健全性を高めるために、ユニットエコノミクスの数値を高める施策を解説します。
- 施策① LTVを高める
- 施策② CACを抑える
施策① LTVを高める
1つ目の方法が、「分子となるLTVを高める」というものです。
この数値は、大きければ大きいほど自社の売上・利益に寄与します。
そしてこの数値を高めるには、LTVの計算式を要素分解することで、下記の施策が有効だと分かります。
- 平均購買単価を上げる
- 購買頻度を高める
- 顧客である期間を長くする
食品スーパーで例えると、キュウリの近くに浅漬けの素やスライサーを陳列するような、クロスマーチャンダイジングで合わせ買いを誘発すれば、平均購買単価は上がります。
また、チラシやイベントを増やせば購買頻度が上がりますし、シニア割引を導入すればお年寄りになっても来店しやすくなり、顧客である期間が長くなります。
これらを実現するために欠かせないのが、「顧客満足度を高める」という意識です。
顧客が「価値」を感じてくれる商品やサービスを生み出し、継続的に提供し続けることがLTVの最大化につながります。
施策② CACを抑える
2つ目の方法は、「分母となるCACを抑える」ことです。
この数値が小さければ小さいほど、自社に利益が残る収益構造になります。
理想は、お金を使った販促による顧客獲得に頼るのではなく、自然に新規顧客が増える仕組みを作ることです。
つまり、先述の「Organic CAC」の比率を高めていくことが、CACを抑える上で重要と言えます。
SNSやECサイトの口コミなどはその最たるものであり、既存顧客による自社の紹介を促すことで、顧客獲得コストを大幅に下げることができるでしょう。
そして、そのような口コミを誘発するためには、「商品やサービスの質を高める」ことによって、顧客満足を向上させることが有効です。
▼売上とコストを管理するために、予実管理が重要です。下記の記事も是非ご覧ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
企業の収益を上げるためには、LTVとCACを算出し、自社の経営状態をチェックしてみることが大切です。
LTVをCACで割った値が3以上になっていない場合、顧客満足度や商品・サービスの質の改善に努めるようにしてください。
しかし、事業フェーズによっては、ユニットエコノミクスやCAC Payback Periodが悪化する時期があったとしても、結果的にそれが市場のなかで優位に働く場合もあります。
投資家の目線でも、例えばユニットエコノミクスが低いから投資を控えてしまうと、それが機会損失になりかねないので、注意が必要です。
<参考>
LTV(ライフタイムバリュー)とは?SaaSにおける重要性やCACとの関係性(KeywordmapACADEMY)
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